太陽光発電の遠隔監視について
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太陽光発電設備の稼働状況を遠隔地から素早く確認できることは、設備の安定稼働やメンテナンス上、重要なポイントの1つとされています。
特に売電方式の設備では遠隔監視の有無により、売電収入に大きな影響が出る可能性があります。
遠隔監視のはじまり
FITにより普及
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太陽光発電システムは日本で導入され始めた当時、「メンテナンスフリー」と謳われていました。 しかし、年々増える故障やトラブルに加え、無人の環境で運用されるシステムが増えたことで、 現在では「太陽光発電はメンテナンスが必要」という認識が広がりました。
さらに、2012年7月の再生可能エネルギー固定価格買取制度(以降「FIT」と表記)開始以降、 発電した電力を少しでも多く売電し続けるために、日常的な設備運用とメンテナンスの需要が高まりました。
そのなかでも、設備の故障やトラブルにいち早く対応するために、設備の稼働状況を遠く離れた場所からでも確認できる「遠隔監視システム」が普及しました。
FIT開始当初、投資目的として太陽光発電事業に参入する業者が増えました。
その影響もあり、売電機会の損失を防ぐ可能性を秘めた遠隔監視システムの導入が加速しました。
FITの改正で更に重要に
2017年4月のFIT法改正により、新たな方針の1つとして「適切な保守管理・維持管理を行うこと」という項目が設けられ、発電設備の保守管理・メンテンスの実施が必要となりました。
具体的な対策の1つとして、発電設備の稼働状況を日常的に管理できるようにするために、遠隔監視システムの導入が挙げられています。このように、近年では遠隔監視の重要性が増し、太陽光発電設備には必需品といわれるまで普及しました。
資源エネルギー庁は、FITに対する質問のなかで「遠隔監視システムは必須ですか?」という問いに対し、次のような回答をしています。
参考:自然エネルギー庁HP 固定買取制度のよくあるご質問“遠隔監視システムは、認定基準上、必ずしも設置しなければならないものではありませんが、保守点検・維持管理のためには有効な手段であり、設置することが望ましいと考えられます。”
遠隔監視の必要性
長期間の安定稼働に向けて
FITの全量買取期間ですが、産業用は20年(家庭用は10年)に設定されています。 20年を超えても太陽光発電システムが安定稼働していれば、引き続き売電や自家消費で消費電力を抑えたりと、長期間稼働させるだけ恩恵を受けることができます。
しかし、長期にわたり太陽光発電設備を運用させていくと、内部的なトラブルや外的要因による故障、 経年劣化などの事態が発生します。そのため、長期間の安定稼働を目指すには、異常を早期発見して対処していかなければなりません。
遠隔監視なしの場合
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太陽光発電設備で1日でも発電が止まってしまうと、異常や故障を発見・対処しない限り、売電機会の損失につながります。
遠隔監視ありの場合
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遠隔監視によって現場の状況を把握し、異常やトラブルを早期発見・対処していくことで、安定稼働を長期間保つことができます。
遠隔監視のメリット
- ・異常やトラブルを早期発見できる
- ・遠隔地から発電量(売電量)を確認できる
- ・パワーコンディショナ(以降「PCS」と表記)の状態を確認できる
- ※PCSとの通信による計測の場合
- ・蓄積したデータから発電の傾向を分析できる
- ・蓄積したデータを資産価値の証明に利用できる
遠隔監視のデメリット
- ・導入時のイニシャルコスト、運用時のランニングコストがかかる
遠隔監視システムのしくみ
システム構成例
基本的な遠隔監視システムの構成例です。
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太陽光発電設備をデータ計測器で測定し、遠隔地から稼働状況の確認ができることを一般的に「遠隔監視」と呼びます。 しかし、設備の仕様や遠隔監視システムにより、計測方法や監視機能などは異なります。
計測方法について
太陽光発電設備を遠隔監視する場合、データの計測方法は「PCSとの通信による計測」と「CTセンサーによる計測」の2種類が代表的です。
どちらも計測を行いますが、計測するポイントが異なります。
PCSとの通信による計測
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PCSからRS-485などの通信にて計測する方法です。
太陽光発電設備の中枢となるPCSは、太陽電池で発電した直流電力を交流電力に変換する役割を果たしています。
PCSから系統へ電力を送る場合、PCSなどに万が一異常が発生して停止すると、一切売電が行えません。発電状況を把握するためには、PCSの監視が必要不可欠です。
- 直流や交流の電流、電圧、電力、PCSの変換効率
- PCSの稼働状態(運転、停止、待機など)
- PCSの故障状況(どのような異常が発生しているのか)
- その他、PCS毎に設定されている20~80項目の情報
発電停止した場合に原因の把握、もしくは予測できることです。 PCSの故障履歴データが原因を特定するための足掛かりとなる可能性があります。また、劣化や損傷が起きた箇所の特定は、安定稼働を持続させる手助けとなります。
「問題なく発電をしているか」だけでなく、「今後も健全に発電をしていくのか」を知ることも大切です。
CTセンサーによる計測
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PCSから系統へ電力を送る間にセンサーを設置して計測する方法です。
CTセンサー方式でもPCSの電流値を測るタイプと発電量のみ測るタイプがあります。※CT(Current transformer)とは、電流量を測定するための端子のことです。
- PCSの電流値もしくは発電量
最大のメリットは手軽さです。機器の設置も容易に行え、専門知識も不要といわれています。また、価格も手ごろとあって低圧の住宅向け太陽光発電システムを中心に広がりを見せております。
しかし、取得できる情報が少ないため、もしも異常が発生した場合に原因の特定が難しい方式となります。
遠隔監視のこれから
セカンダリー市場の活性化
太陽光発電業界の「セカンダリー」とは、すでに稼働済みの太陽光発電設備を売買することを指します。市場規模は、年々増加の傾向を辿っています。
セカンダリー市場では、資産価値を維持ずることが重要なため、遠隔監視システムを後付けで導入する例もあります。発電低下の早期発見だけでなく、蓄積した発電データから設備の状態を証明するのにも役立つといわれています。
第三者所有モデルによる活用
第三者所有モデルとは、事業者が無料で太陽光発電設備を設置し、設置場所を提供した消費者に発電した電力を販売する形態を指します。別名「PPAモデル」や「オンサイト発電サービス」とも呼ばれています。
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太陽光発電設備は、所有するにも所有し続けるのにもコストがかかります。
しかし、第三者所有モデルでは、初期投資がゼロな上に管理・メンテナンスも全て事業者側が行います。
そのため、発電した電力を購入する消費者側は、コストやリスクを負うことなく、太陽光発電の電力を使用できます。※各サービスにより契約条件は異なります。
消費者に安定した発電電力を提供し続けるために、第三者所有モデルでも遠隔監視システムの導入が進んでいます。
遠隔監視サービスのご紹介
フィールドロジックでは、PCSとの通信による計測を採用した遠隔監視サービスを提供しております。
稼働状態や故障状況など、運用・保守に必要な情報がリアルタイムかつ正確に把握できるため、効率的なメンテナンスに役立ちます。
用途別に選べる監視
遠隔監視の事例
1つの設備を詳細に監視できる「cromame」は、 案件の仕様やお客さまのご要望に合わせたカスタマイズが可能で、案件オリジナルの遠隔監視画面をご提供できます。
- ストリング監視
- カメラ監視
- 単線結線図表示
- 設備全体のMAP表示 など
※上記例は、これまでに納入したカスタマイズの一例です。
※その他、監視対応およびカスタマイズの詳細はお問い合わせください。
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