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太陽光発電の低圧と高圧の違い

太陽光発電は、広大な土地に何百何千枚と太陽光パネルを設置するような大規模な設備や建物の屋根に数枚設置する小規模な設備など様々です。

大規模・小規模という呼び方もしますが、容量により「低圧」「高圧」という法律上正しい定義・区分が存在します。

目次

    低圧と高圧について

    「電気事業法」や「電気設備に関する技術基準を定める省令」などの法律により、電圧の大きさは3種類に定義・区分されています。

    区分 交流 直流
    低圧 600V以下のもの 750V以下のもの
    高圧 600Vを超え、7,000V以下のもの 750V超え、7,000V以下のもの
    特別高圧 7,000Vを超えるもの 7,000Vを超えるもの

    低圧・高圧を分けるのは50kW

    電気事業法を太陽光発電に当てはめると、発電出力が50kW未満だと「低圧」、発電出力が50kW以上だと「高圧」に分類されます。

    ※連系する系統電圧も関係します
    分類 分類 内容
    低圧
    (一般用電気工作物)
    発電出力が50kW未満で交流電圧が600V以下、直流電圧が750V以下のもの
    高圧
    (自家用電気工作物)
    発電出力が50kW以上で交流電圧が600Vを超え、直流電圧が750Vを超えるもの
    特別高圧
    (自家用電気工作物)
    発電出力が2,000kW以上のもの

    低圧の特徴

    低圧は、発電出力が50kW未満で交流電圧が600V以下、直流電圧750V以下の発電設備です。

    低圧の太陽光発電イメージの写真

    低圧のメリット

    • ・建設費用が安く始めやすい
    • ・狭い屋根や土地にも設置できる
    • ・管轄消防署への保安規程の届出・電気主任技術者の選任が不要
    • ・第二種工事士でも作業が可能

    高圧案件で必要な各種届出や、高額なキュービクル(変圧器)の設置、電気主任技術者(国家資格)の選任が不要で、 設置工事は第二種電気工事士でも行えます(高圧以上では第一種電気工事士または認定電気工事従事者が行う)。
    また、高圧と比較して、低コストかつ狭い土地でも運用が可能です。

    低圧のデメリット

    • ・1kWあたりの建設費用が高い(小規模すぎると費用対効果が薄い)
    • ・安価な土地を探すのが難しい

    低圧は初期投資が抑えられます。しかし、コスト面で見た場合、50kWの低圧発電設備を20ヵ所建設するより、1MWの高圧発電設備を1ヵ所建設する方が単価が安くすみます。さらに、50kWの発電設備を設置するだけの土地の広さは、住宅地用途として需要が多く、坪単価が高騰します。一方、高圧は山林や原野などの安くて広大な土地を活用できるため、低圧の方が土地代による負担は大きいと言えます。

    低圧の分割は禁止

    FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)開始当初、例えば500kWの太陽光発電設備が収まる土地を分割し、その中で50kWの発電設備を10箇所に分けて建設することが可能でした。

    こうすることで全設備が低圧扱いとなり、高圧では必須のキュービクルの設置や、電気主任技術者の選定が不要となるためです。しかし、本来は発電事業者に課されるこれらの負担を、電力会社が実質的に肩代わりする形となってしまうため、公平性を欠くとの判断で平成26年度4月1日以降、分割案件は禁止となりました。

    高圧の特徴

    高圧は、発電出力が50kW以上で交流電圧が600Vを超え、直流電圧750Vを超える発電設備です。

    高圧の太陽光発電イメージの写真

    高圧のメリット

    • ・1kWあたりの建設費用が安価
    • ・一括管理が可能
    • ・売電収入が大きく、投資利回りも高い

    低圧に比べ、スケールメリットにより1kWあたりの建設費単価が抑えられます。一方で売電収入は大きく、投資の利回りも高くなります。

    高圧のデメリット

    • ・イニシャル・ランニングコストが高くなる
    • ・管轄消防署への保安規程の届出・電気主任技術者の選任義務が発生
    • ・第一種工事士よる作業が必要

    50kW以上の高圧連系の発電設備の場合、発電用工作物(発電所)に位置づけられ、「自家用電気工作物」と種別されます。

    これにより管轄消防署等への保安規定の届出をはじめ、高額なキュービクル(変圧器)の設置や電気主任技術者の選定が義務化されています。大規模化に比例して、建設費・維持管理に必要なコストが高まります。

    特別高圧(特高)

    高圧の中でも受電電圧が7,000V以上かつ発電出力が2,000kWを越える場合は「特別高圧」に該当します。略称で「特高」とも呼ばれています。

    特別高圧の太陽光発電イメージの写真

    発電所に近い大規模事業となるため、太陽光発電自体の導入単価は劇的に下がり、発電量も非常に大きくなります。反面、電力会社による供給電力制限を受ける可能性や、電力会社の変電所の許容量によっては、送電線などの新設を検討する必要が出てくるなど、リスクも大きくなります。

    過積載について

    太陽光発電における「過積載」とは、パワーコンディショナ(以下PCS)の容量以上の太陽電池パネルを設置することを意味します。

    過積載のPVとPCS容量比較図

    例えば容量49kWのPCSに対し、60kW分の太陽光パネルを設置した場合です。「太陽光パネルの容量が50kW以上になると高圧になるのでは?」と思った方もいらっしゃるでしょう。 ですが、太陽光パネルとPCS、いずれかの容量の小さい方が太陽光発電システムの発電出力となります。太陽光パネルの容量が50kWを超えても、PCSの容量が50kW未満であれば、低圧扱いとなります。

    そしてこの場合、太陽光パネルがPCSの容量を超えて発電した際は、電気を捨てることになります。しかし、実際は太陽光パネルの容量いっぱいに発電できるほどの好条件はそれほど多くはありません。

    ピーク時(PCS容量を超した時)の発電電力をカットしても、それ以外の時間帯などでも発電量が増加するため、 結果的に収益増に繋がります。朝夕の日射の少ない時間帯に発電量を確保し、電力供給のムラを軽減できるという訳です。

    過積載のメリット

    • ・全体的な発電量が増え収益アップ
    • ・設備の利用効率アップ

    過積載のデメリット

    • ・太陽光パネルの数量が増える(設備費増)
    • ・ピークカット時に捨てる電力も増える
    ※太陽電電池は半導体なので、周囲の温度で開放電圧が変化します。無考慮で、過積載を行うとPCSが破損する可能性がありますので注意が必要です。

    新たなリスク

    PCSは、機種にもよりますが基本的に10年前後のメーカー保証が付いています。
    しかし、過積載に対する保証については曖昧な部分があります。(現在では過積載率を公開したり、保証対象として明示するメーカーも増えてきました。)

    2017年の改正FIT以降、FIT認定取得後に太陽光パネルの容量を「3%以上もしくは3kW以上増設、または20%以上減設」すると、 買取価格に(太陽光発電の規模により異なりますが)ペナルテが課されるようになりました。

    容量にあった計測・監視を

    一昔前は、メンテナンスフリーといわれた太陽光発電ですが、実際は経年劣化や環境の変化など、様々な要因が発電の妨げとなります。
    安定した稼働を続けるためには、発電の値や故障情報の計測・監視を行い、設備の状態を把握することが重要です。

    太陽光発電の計測

    フィールドロジックでは、設備の容量やご利用目的に合わせた、最適な計測システムをご用意しております。

    フィールドロジックの計測システム

    発電データやPCSの状態以外にも蓄電池の充放電の計測やパルス信号を用いた電力量の計測、パネルの裏面の温度測定、 マルチメーターを利用した消費電力の計測なども行うことができます。

    太陽光発電の遠隔監視

    低圧・高圧共に、設備の稼働状況をいつでも監視できないと、異常が発生しても停止や故障に気づかず、発電損失が大きくなる可能性があります。

    フィールドロジックでは、上記計測システムと連携し、設備の稼働・故障状況をPC・タブレット端末を通して遠隔地から監視するO&Mに適したサービスです。

    フィールドロジックの遠隔監視サービス

    1ヶ所の発電設備を詳細に監視できるサービスの他、複数の発電設備を一括管理できるサービスもご用意しております。 運用・保守に必要な情報がリアルタイムかつ正確に把握できるため、効率的なメンテナンスに役立ちます。

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