太陽光発電の出力制御について
平成27年1月の再生可能エネルギー特別措置法の改正により、太陽光発電事業者は一般送配電事業者や特定送配電事業者から出力抑制を要請されたら協力しなければなりません。
九州地区では、資源エネルギー庁や九州電力が定めた制御のガイドラインに則り、出力制御機能があるパワーコンディショナ(以降「PCS」と表記)や通信設備などの導入が続々と進められています。
出力制御とは
太陽光発電の出力制御とは、電力会社が発電設備から電力系統への出力を一時的に停止あるいは抑制することです。
出力制御が必要な理由
2012年の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)により、太陽光発電や風力発電をはじめとする発電設備は、資産価値の高い設備として導入され始めました。しかし、再生可能エネルギーが急速に普及したために電力の供給が増加し、需要を上回ってしまうことが懸念されはじめました。
電力会社から供給する電力は、需要の大きさと一致させていなければいけません。
もし、この需要と供給のバランスが崩れてしまうと周波数を保てなくなり、電力の安定供給に支障をきたします。最悪の場合、故障や大規模な停電が起こる恐れもあります。
電力会社が安全かつ安定な電力供給を行い続けるためには、供給過多を避けるために発電設備からの出力を制限し、受け入れる電力をコントロールする必要があります。
2014年4月、固定価格買取制度(FIT)の価格が値下がりする影響により、駆け込みで系統接続の申込みが殺到しました。
九州電力では、需要と供給のバランスが崩れると危惧し、同年9月に系統接続の回答を一時的に保留する発表を行いました。さらに、他の電力会社でも新規接続契約の保留や受け入れ制限を検討する発表が立て続けに行われたことで、これらの出来事は「九電ショック」と呼ばれるようになり、その後の出力制御対応に拍車がかかりました。
出力制御の目的
出力制御の目的として、電力会社が消費者に対し安定した電力供給を行うことの他に、再生可能エネルギーの導入を拡大させることが挙げられています。
太陽光発電は、天候に左右され発電量を調整できず、貯めることもできません。そのため、出力制御しない場合は、接続可能量
は最も需要が少ない状況が基準となります。つまり、電力をたくさん売ることができる状況であっても、定められた基準が低いために売電機会を逃してしまうことになります。しかし、出力制御する場合であれば、最も需要の少ない状況で出力制御を行い、需要の多い状況では出力制御を行わずに発電できるため接続可能量が増加します。
これにより、多くの発電設備を系統に接続することができるようになります。
3つの出力制御ルール
2015年1月に再生可能エネルギー特別措置法の一部改定に伴い、太陽光発電における「出力制御ルール」が変更されました。太陽光発電の出力制御ルールには3種類があり、適用されるルールは地域や設備容量によって異なります。
指定ルール
国から指定電気事業者に認定された電力会社が、接続申込みが接続可能量を超えた場合、 それ以降に接続申込みをした発電設備を対象に上限時間なく無補償で出力制御を要請できるルールです。
制御方法:スケジュールによる出力制御
※60kV以上の場合は、系統連系規定により専用回線による出力制御となります。
高圧以下(22kV含む)の指定ルールでは、スケジュールによる制御を行う仕様ため、出力制御機器の導入が必須です。
360時間ルール(新ルール)
電力会社が出力を抑制しても電力供給が需要を上回る場合、年間360時間を上限に無補償で出⼒制御を要請できるルールです。
制御方法:現地操作による出力制御
※スケジュール制御が行える場合もあります。
※60kV以上の場合は、系統連系規定により専用回線による出力制御となります。
30日ルール(旧ルール)
電力会社が出力を抑制しても電力の供給が需要を上回る場合、500kW以上の発電設備に対してのみ年間30日を上限に無補償で出⼒制御を要請できるルールです。
※2015年1月25日以前に接続申込みをした発電設備のみ適用されます。制御方法:現地操作による出力制御
※スケジュール制御が行える場合もあります。
※60kV以上の場合は、系統連系規定により専用回線による出力制御となります。
フィールドロジックでは、旧ルールが適応されている案件でもオフィスやご自宅から出力制御対応できるシステムをご提供しております。
現地への訪問が不要になるだけでなく、PCはもちろんスマホやタブレット端末からいつでも簡単に制御命令を送れるため、大幅な効率化が期待できます。
出力制御のしくみ
スケジュールによる出力制御
指定ルールが適用される発電設備では、スケジュールによる出力制御を行います。
※360時間ルールと30日ルールでも条件が合えば、スケジュール制御が行える場合もあります。
電力会社の電力サーバから配信される出力制御スケジュールに則って出力制御を行う方式です。出力制御スケジュールは2種類あり、それぞれ運用方法が異なります。
出力制御ユニットにより、対応しているPCS(狭義)が異なります。そのため、出力制御ユニットがPCS(狭義)に対応しているかメーカーに確認が必要です。また、出力制御ユニットが電力サーバと通信できるように、インターネット回線の用意も必須となります。
固定スケジュール型
電力会社から配信される固定スケジュール
固定スケジュールは、最大400日分の制御予定が年間設定されたスケジュールです。
固定スケジュールは、電力需要が少なく発電量の多い時期を考慮した設定です。そのため、更新スケジュール型と比べ大まかな制御予定となり、売電機会を失う可能性が高くなります。
現地にインターネット回線(外部通信機能)の開設が物理的に困難な場合を除き、更新スケジュール型での制御が推奨されています。
更新スケジュール型
電力会社から配信される更新スケジュールを出力制御ユニットが取得し、予めバックアップスケジュールとして設定した固定スケジュールを部分的に自動更新して出力制御を行います。
更新スケジュールは、電力会社が直近の気象データなどを考慮し、実情に即した必要最低限の制御値を使用します。そのため、固定スケジュール型より売電機会の損失を抑えることができます。
売電機会の損失を防ぐ遠隔監視
電力会社が定める仕様では、出力制御の対応案件(66kV未満)にて通信異常が起きた場合、発電停止になる可能性があります。異常に気付けずに放置された場合、売電ができない状態が続きます。そのため、遠隔監視で異常を素早く把握し、売電機会の損失を防ぐことが重要となります。
「出力制御ユニットとPCS(狭義)間の通信」と「出力制御ユニットの状態」を遠隔から監視できれば、異常を早期発見・対処することで発電機会の損失を抑えることができます。
更新スケジュールで出力制御を行っている場合、通信が途絶えたままだと出力制御値が多い固定スケジュールが適用されるため、通信異常を早期発見することが重要です。
専用回線による出力制御
特別高圧の発電設備は、発電情報取込用の専用通信回線を活用することで出力制御を行う方式です。※60kV以上は、系統連系規定により、専用回線による発電情報取込が連系要件となっています。
現地操作による出力制御
360時間ルール(新ルール)と30日ルール(旧ルール)が適用される発電設備に限り、スケジュールによる制御の他、出力制御ユニットを使用せずに現地操作によって出力制御を行う方法があります。
前日に電力会社から出力制御予定が電話・メールなどで連絡が入り、当日に現地に出向いて手動で停止・発電の操作を行う方式です。
スケジュールによる制御の場合は、自動で時間帯を限定して出力を抑制できますが、現地の手動操作では前後の時間帯まで出力の停止期間が延びてしまい、それだけ売電収入が減ることになります。また、現地操作する作業員の人件費もかかります。
出力制御が必要な地域・設備
出力制御の対象となる設備は、地域や設備容量によって適用されるルールが異なります。
50kW未満であれば、東京電力・中部電力・関西電力の地域は出力制御対応機器の設置義務がありません。その他電力会社の地域では、10kW未満であっても出力制御の対象となり、出力制御対応機器を設置する義務があります。
10kW未満の案件
東京電力 中部電力 関西電力 |
東京電力 中部電力 関西電力 |
出力制御の対象外 |
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北陸電力 中国電力 四国電力 沖縄電力 |
・平成27年3月31日までの接続申込み案件は、出力制御の対象外。 |
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北海道電力 東北電力 九州電力 |
・平成27年3月31日までの接続申込み案件は、出力制御の対象外。 |
(※2) いつ時点の接続申込み案件から「接続可能量超過後に接続申込みをしたと認められる案件」となるかについては、各電力会社にお問い合わせください。
10kW〜50kW未満の案件
東京電力 中部電力 関西電力 |
東京電力 中部電力 関西電力 |
出力制御の対象外 |
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北陸電力 中国電力 |
・平成27年3月31日までの接続申込み案件は、出力制御の対象外。 |
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四国電力 沖縄電力 |
・平成27年1月25日までの接続申込み案件は、原則出力制御の対象外。 |
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北海道電力 東北電力 九州電力 |
・接続可能量超過後に接続申込みをしたと認められる案件からは「指定ルール」を適用。 |
(※2) いつ時点の接続申込み案件から「接続可能量超過後に接続申込みをしたと認められる案件」となるかについては、各電力会社にお問い合わせください。
(※3)電力会社の系統の状況によっては、1月25日以前の接続申込み案件であっても、360時間ルールの対象となる場合もあるので、詳しくは各電力会社にお問い合わせください。
50kW〜500kW未満の案件
東京電力 中部電力 関西電力 |
東京電力 中部電力 関西電力 |
・平成27年3月31日までの接続申込み案件は、出力制御の対象外。 ・平成27年4月1日以降の接続申込み案件から、「360時間ルール」を適用。 |
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北陸電力 中国電力 四国電力 沖縄電力 |
・平成27年1月25日までの接続申込み案件は、原則出力制御の対象外。 |
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北海道電力 東北電力 九州電力 |
・接続可能量超過後に接続申込みをしたと認められる案件からは「指定ルール」を適用。 |
(※2) いつ時点の接続申込み案件から「接続可能量超過後に接続申込みをしたと認められる案件」となるかについては、各電力会社にお問い合わせください。
(※3)電力会社の系統の状況によっては、1月25日以前の接続申込み案件であっても、360時間ルールの対象となる場合もあるので、詳しくは各電力会社にお問い合わせください。
500kW以上の案件
東京電力 中部電力 関西電力 |
東京電力 中部電力 関西電力 |
・平成27年1月25日までの接続申込み案件は、「30日を上限とした日単位の出力制御(30日ルール)の対象。 ・平成27年1月26日以降の接続申込み案件から、「360時間ルール」を適用。 |
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北陸電力 中国電力 四国電力 沖縄電力 |
・平成27年1月25日までの接続申込み案件は、原則出力制御の対象外。 |
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北海道電力 東北電力 九州電力 |
・接続可能量超過後に接続申込みをしたと認められる案件からは「指定ルール」を適用。 |
(※2) いつ時点の接続申込み案件から「接続可能量超過後に接続申込みをしたと認められる案件」となるかについては、各電力会社にお問い合わせください。
(※3)電力会社の系統の状況によっては、1月25日以前の接続申込み案件であっても、360時間ルールの対象となる場合もあるので、詳しくは各電力会社にお問い合わせください。
出力制御はどのような順番で行われるか?
出力制御は、発電設備の種類ごとに出力を抑制する条件や順番を定めた「優先給電ルール」に則って実施されます。※九州電力で採用されている仕様です。
需要に対して供給が多すぎる場合、まずは揚水運転(電力を消費して水をくみ上げさせること)で供給調整し、次に発電の調整が行いやすい火力発電などの出力を抑制します。それでも供給が需要を上回る場合は、地域間の電力融通、バイオマス発電の抑制と続き、5番目に太陽光発電と風力発電の出力抑制が行われます。
当社の出力制御ユニット(出力制御機器)は、新規設備はもちろん、既存設備にも柔軟に導入することができます。FL-Baseと連携することで、通信や機器の故障を遠隔地から確認できます。
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